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見た映画と本の感想を、悪文かまわず吐き出しております。やや毒舌が多いのでご注意を。
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獣の奏者
四部作+外伝
上橋菜穂子 著



読みました。
感想を述べる前にまずは一言。


面白かった!!!!!!!!!!!!!!!

久々に大興奮&もう続きが待ちきれないフハァフハァ状態。

こんなに面白い本に出会えたのは本当に久しぶりです(ダイアナさん除く)
どんどん読んで読んで読んで読み続けたい!
と、気持ちが焦って心を落ち着かせながら読める本にはなかなかそう簡単には巡り合えません。
あぁ、幸せ。
本を読む幸せを久方ぶりにじんわりと感じました。
図書館で借りたんですが、勿論、全部買い揃えますよ!!!!!!ギャホゥ





あらすじ
エリンの母親は、戦用に育てられている闘蛇の医術師であった。ある時、闘蛇が大量死し、異民族であった母はそれの咎を一人押し付けられる。母を救うべく村を飛び出したエリンだったが、無残にも母は非業の死を遂げ、エリン自身も生死の境を彷徨う事になる。
運良く蜂飼いに助けられたエリンは、蜂飼いの家で厄介になりながら蜂の生体を学び、そこで偶然、闘蛇を喰らう唯一の天敵・王獣に出会う。王獣に出会ってから、エリンは生きとし生けるものの「生」とは何なのか、「性」とはなんなのかを疑問に感じ、やがてその想いは運命に翻弄されながら、答えへと導かれていくのだった。


全部で四冊プラス一冊
前二冊 「闘蛇編」「王獣編」が前後編で、一つのお話。エリンの幼少期~大人の女性になるまでの間のお話。
後二冊 「探求編」「完結編」も前後編で、一つのお話。前のお話から10年は経ってます。
外伝は「堅き盾」のイアル視点のお話と、王獣舎の教導師長エサルの若かりし頃のお話。



上橋さんの著作を読むのはこれで二シリーズ目で、前に読んだのは「精霊の守り人」。こちらはアニメを先に見ていたせいか、読み進むのも早く、一冊で完結している事もあって、読後感はすっきりしたものでした。
アニメも丁寧なつくりでわかりやすく面白かったし、映像が美しかったです。小説も、アニメに劣らず、物語の伝承や細やかな生活背景や描写など、まるでアジアのどこかの国の歴史書を読んでいるかのような、精緻に描かれたお話でした。

著者が大学時代に文化人類学を専攻して学んだ事が生かされているのでしょう。物語の地盤がしっかりしています。



この「獣の奏者」もまた、アジア風の雰囲気のある世界観で、国の歴史や暮らしぶりなど、詳細に書かれています。

エリンの生まれ育った場所は大公(アルハン)と言う名で、沼に住まう闘蛇と言う獣を駆って、国境を守り、国土を広げてきました。その大公は、真王(ヨジェ)と言う国の礎となった地を守る為に作られた領地で、大公は真王の配下と言う立場でした。真王の領地は血を流す闘いを穢れとし、ただひたすらに国の安寧を祈る地で、全ての穢れは大公が引き受けていたのです。
大公には闘蛇乗りの閣下が頂点におり、その地を治め、真王には大公をも含め全ての上に立つ女の陛下がいました。
王獣は空を駆ける大きな獣で、真王の象徴となっています。ただし、真王の地で飼われる王獣は交配をせず、空も飛びません。武器として使うには恐ろしすぎる獣なので、音無し笛を使って、ただ祭事に飾られるだけの存在です。
一方、王獣の天敵と言える闘蛇は、大公では多く戦闘用に飼育されています。エリンが育ったのは、その闘蛇を育てる闘蛇村で、闘蛇が大公の象徴でした。
やがて国が大きくなっていくにつれて、その形に疑問を持つ者が現れます。大公の領地の人々は何故自分達が穢れを一手に引き受け、真王の人々がのうのうと戦を逃れて生きているのか。どうして大公ではなく、真王が国の頂点なのか、と。
大公閣下を国の頂点にと望む者が現れ始め、真王は命を狙われる事となり、『堅き盾(セ・ザン)』と言う、その名の如く命を盾にして真王を守る組織が結成されます。
国は大きく豊かになるにつれ、二つの権力がひそやかに拮抗していくのが、この物語の下地になっていて、エリンが過酷な運命を辿る要因です。



物語の素地になったこの二つの権力の話は面白いとは思いますが、それよりまずこの物語を読んでみようと思ったキッカケは、闘蛇と王獣、この二つの動物の医術師になると言うコンセプトに惹かれたのでした。
著者の想像上の動物の医学を、どこまでリアルに描かれるのか、とても気になったもので。それも音を奏でて交流を試みるならば、ますます興味がそそられます。

エリンと闘蛇の触れ合いはあまり描かれなかったのですが、王獣との触れ合いはベタな動物モノと言ってしまえばそれまでですが、やはり感動しますし、蜂飼いの元で学んだ事が次の王獣舎でも生かされていて、これまで体験してきた中で知らず知らず多くの事を学んでいるのだなぁと感心しました。
(いやー、私なら糞でそんなん気づかないだろーしなー)


闘蛇と王獣の関係、そして忘れ去られた過去の伝説。
ゆっくりと謎を解き明かしていきながら、エリンは何度も己の壁にぶつかり、自問自答します。それが運命だからとただ流されるだけでなく、昔からこういうものだからと掟をただ受け止めるのではなく、自分の意思で運命を決定し、掟を破っていくのです。
「ただ生まれたものを、あるがままに」
この信念のもと、エリンは生き、それを貫き続けるのです。

母親の凄惨な死、その後のジョウンとの山での日々から、エリンが「知る事」の喜びを覚え、そこから「生きる」と言う事は何なのかをずっと追求し続けてきたのだなぁと、外伝を読んで思いました。




以下、ネタばれ含む感想ですので、これから読もうと思っている人は読まない方が吉。







個々に楽しい人物やエピソードが満載で、泣かずには読めない台詞の数々もここでとくと語りたいのですが、それをすると、「えぇいもうまどろっこしい!!!読んでくれ!!!!!」と、明らかに読んだ方が早いので細やかには語りませんが・・・一人だけ・・・特筆して語りたいと思います。

それは「神速のイアル」!

闘蛇・王獣編は普通に楽しんでエリン視点でしたが、探求・完結編は途中からイアルの事に関心が集まってました。
探求編のヨハルとの闘蛇村の話も勿論とても面白かったんですが、エリンが誰と結婚したのか気になってて、出来ればトムラかイアルがいいなと思ってたんですけど、まさか本当にイアルだった時は小躍りしたくなりました。
あのイアルが一体どんな話があってこんな事に・・・・?!と、二人のやり取りがあんまり想像出来なくって、勝手に想像してにやにやしました。
闘蛇・王獣編でイアルの過酷な運命の先にはきっと戦いで命を落とす事になるだろうと思っていただけに、幸福とは言えないけれども静かで穏やかな日々を過ごせたのだと思うと嬉しいです。
8歳の頃に理不尽にも売られ、盾となって生き、多くの人を殺した身としては、きっと心穏やかな日常など想像も出来なかったに違いありません。
何処か自分の人生の区切りを意識しながら生きていたようなイアルが、セ・ザンの誓いを解いた後、どんな風に生きるのか生きる意志が果たしてあるのかと心配していたのですが、彼がこの先を生きていこうと決めたエピソードが「外伝」にありました。
「あなたは自分の生に後悔しかないの?」
この一言は強烈でした。
生き物は誕生を選べない。その生に後悔しかないのか。その運命を受け入れるしかないのか。
私は人生を諦めたくない、だから、どうかあなたも諦めないで。
そう乞うエリンの言葉がずっとイアルの胸に残っているんでしょう。

どんな酷い道しか前に用意されてなくても、その道をどう進んでいくかはその人間の気持ち次第なのだと思いました。
勿論、それには弱さに負けない心が必要なのですが、その逞しい心を作っていくのも、その人間がどういう歩き方をしたかによって変わるんでしょうね。


生きると言う事を強く意識して生きているエリンがイアルを救う存在になるのは納得がいき、過酷なエリンの運命に寄り添えるだけの強さを持っているイアルだからこそ、二人が添うのは自然な流れだったのでしょう。

心の支えだけでなく、実際、彼ほどエリンを支えられたのは、師長のエサル以外いません。
実戦経験を持ち、優れた技能と知性と冷静な判断力を持っていて、尚且つ辛い道を厭わないイアルは、エリンが王獣使いにならざるをえなくなった時、闘蛇乗りに志願して大公と真王の兵士達を結ぶ架け橋になって、エリンを助けます。
イアルが闘蛇乗りになると言い出し、困惑するエリンの目をものともせず、大公の申し出を蹴り、自分の意思をきっちりと言い切った時、その時の言葉を読んだ瞬間、痺れました。
大公がイアルの立場を慮ってくれ、彼を後方部隊の上級武官に、とあまり危険ではない配置をしてくれたのに対し、それを蹴り、何故だと問われて、一言。
「最前線を駆ける覚悟のない者に、武人は敬意を抱かぬからです」

・・・・かっこよすぎだろ、イアル!!!!
もうこの台詞が一番印象に残ってる。かっこよすぎる。たまらん。
イアル自身が武人だからこそ、思える言葉なんだろう。
にしても、真王を諌めたり、大公に反論したり、こいつは一体何者だ(笑)



この本を読む直前にたまたま「ドールハウス セカンドシーズン」の4巻目まで見ていたせいで、頭の中で
エリン=エコー(エリザ・ドゥシュク)
イアル=ポール・バラード(ターモー・ペニケット)
これで想像して読んでましたvvv 
ポールの頑固で真面目な所がイアルっぽくて(*^w^)


さて、イアルについて語ると、ここから二次創作小説が始まりそうなのでこの辺にしておいて、後はザッとでありますが、この物語の特筆したい点をば。



なんといっても・・・数々の聡明なキャラクター達。
普段ダイアナ小説の台風キャラばかりを読んでいる身としては、先を見通して己を自戒する良心を持つ人々ばかりが出てきて驚かされます。少なくとも、私が今まで読んできた小説ではありえない。
癖があるわけじゃないけれど、それぞれがそれぞれの立場に立ち、最良の道は何なのかを探り、それを適える為にはどういう道筋を辿れば良いのかを考え、行動してます。それ故にぶつかってしまう部分が出てきてしまうのは仕方なくて、政治に関しては現代の我々の社会の歪な構図に似ている所もありました。
分かりやすい嫌なキャラも勿論出てきますが、一人を除き、さして重要じゃないですからね。そのキャラクター一人を悪に押しとどめるのでなく、一般的な人を象徴させるだけの登場なので、そのキャラクターに苛立たされる事は少ないです。
イアルの他にかっこいいと思ったのは、大公でした。
彼は良い武将です。
自分をヨイショする身内だけを周りに置くでなく、彼の言動や行動から、末端までを気にかけてるのがよくわかりますし、真王セィミヤに対する態度が非常に男らしかった。


闘蛇と王獣に関しては、そこまでこの動物に興味をそそられはしなかったのだけれども、子孫を残す為に生命とは不可思議な生態を持つのだと思いました。これを思えば、異種であろうとも生きるものはみんな一つの群れの中で生きて均衡を保っているのだと、そう感じました。人間も含むね。




上橋さんの書かれる小説はとても丁寧で分かりやすく、淡々と描かれた中にはっとするような一文が潜んでいて、読んでいる手が止まる事がしばしばありました。
何度も読み返したくなる、そんな小説です。
優秀すぎる優等生の書いた、超優秀作。



もうしばらく獣の奏者に浸った後、守り人の続きも読んでみようかなーと思いますです。
・・・・原作を先に読んでしまったので、多分アニメは見ないです。



最後の名句を一つ。

『人は今しか作れない』
心に沁みる言葉です。
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